東京高等裁判所 昭和32年(ネ)311号 判決
控訴人が昭和二十九年四月三日、訴外相互電機株式会社を受取人として金額十一万円、満期同年五月二十七日と定めた本件約束手形を振り出したことは当事者間に争いがない。而して被控訴人は現に右手形を所持しているが、右手形の裏書らんには、最初に訴外会社の、次いで訴外加藤源治の各白地式裏書の記載が認められるから、被控訴人は右手形の適法な所持人と推定すべきである。
ところが控訴人は、本件手形は訴外会社が昭和二十九年四月三日控訴人に宛てて振り出した金額十一万円の手形と交換的に振り出したものであるから、同会社に対しては支払義務を負わないところ、被控訴人はこれを訴外加藤から、期限後裏書によつて取得したのであるから、訴外会社に対する右抗弁をもつて被控訴人にも対抗することができると主張するので判断するに、証拠によれば、控訴人は訴外会社の依頼により同会社に金融の便を与えるため本件手形を振り出し、これと交換的に同会社よりも交換手形の振出交付を受けたところ、右交換手形を満期に支払のため呈示したが支払を拒絶されたので、本件手形の支払をも拒絶した事実を認めることができる。そうすると控訴人主張の趣旨は、本件手形振出の事情が右のとおりであるのに、訴外会社において交換手形の支払をしないから、控訴人も同会社に対し本件手形の支払に応ずる義務がないというにあるものと解されるが、それはもとより訴外会社に対する人的抗弁にすぎない。そして控訴人は、被控訴人が本件手形を訴外加藤から期限後裏書によつて取得したことを理由として、訴外会社に対する右抗弁を被控訴人にも対抗することができると主張するが、期限後裏書の被裏書人に対してはその裏書の裏書人に対する抗弁をもつて対抗することができるけれども、それ以前の裏書の裏書人に対する抗弁をもつては対抗することが許されないから、たとえ加藤の被控訴人に対する裏書が期限後裏書であつたとしても、それ以前の裏書の裏書人である訴外会社(訴外会社の加藤に対する裏書が期限後裏書であることは控訴人の主張しないところである。)に対する前記抗弁をもつて被控訴人に対抗することは許されないものといわなければならない。
従つて控訴人の抗弁は、訴外加藤の裏書が期限後裏書であつたかどうかにつき判断するまでもなく失当であるとして、本件控訴はこれを棄却した。